【のぼれやのぼれ】
のぼれのぼれと急かされて
いまは見えないのぼった先に
まるで何かがあるかのように
まるでのぼった先だけに
明るい未来があるかのように
わき目もふらずにのぼるが勝ち、と
足元の大地の恵みに目もくれず
ささやく木々と触れあいもせず
後ろの豊かな実りに目を背け
ただ上にだけ照準を向け
疲れも無視で足を動かす
のぼった先に答えがあると信じこみ
のぼれば何かが得られると思いこみ
真実を置き去りにしてのぼり続ける
歩みが止まれば息も止まり、
足を止めれば転げ落ちると
休むことさえ否定され
ただまっしぐらにのぼれば良いと
のぼった先で得られるものは
ひとときだけの優越感と
延々ついてまわる劣等感
のぼった先で見えるのは
ほんの少しの見張らしと
次にのぼるための階段のみ
ほんとに欲しいものは今あって
ほんとは充分持ってるのに
のぼればのぼるほど遠くなり
のぼればのぼるほど見えなくなる